いくのdeリノベ6月号 オリジナルデザインへのこだわり、チャレンジ精神、そして生野のまちへの熱い思い

社長の高本泰朗(たかもとやすお)さん
暖簾(のれん)には、ひらがなで大きく「くつ」「さんだる」と書いてある。遠くから小さなこどもでも何のお店かわかるようにとの思いからなのだそう。

北巽駅からほど近い勝山通沿いにある「リゲッタ生野本店」。白地に赤のロゴが映える暖簾(のれん)が、まちゆく人の目を引く。お店を運営するのは株式会社リゲッタ。社長である高本泰朗(たかもとやすお)さんは、20代半(なか)ばで父の経営する履物(はきもの)製造会社に入社。しかし間もなく、親元メーカーから契約打ち切りの知らせが。窮地(きゅうち)に追い込まれた高本親子の決断は、自らの企画・デザインで、全ての責任を負うメーカーとしての再スタートだった。そして、泰朗さん35歳の時、2代目として会社を受け継いだ。

リゲッタ生野本店で販売している靴やサンダル。
伝統の履物“下駄(げた)”をヒントに作られている。
左上はキッズ用のサンダル。
大人は男性用・女性用ともに、休日からビジネスまで使える幅広い品揃えが並ぶ。

今年2月、本社のある生野でオープンしたこの店は、古い工場をリノベーションしたもの。飴(あめ)色に変化した木の壁や天井、昔ながらの技法で作られたむき出しの鉄骨の梁(はり)は、そのまま活かした。床には小上がり風に段差を設け、無垢(むく)の木を敷きつめた。靴を脱いでゆっくりとお気に入りの一足を探してもらえるようにと考えたものだ。

お店の外観。
シャッターだった入口には透明の板を張り付けたことで、外からの光がたっぷり入るようになっている。
オープンしてほどなく取材に行った際には、お祝いの胡蝶蘭がたくさん飾られていました。

リゲッタのサンダルに履き替え、店内をゆっくりと見てまわることができる。

解放感たっぷりの店内。経営する店舗では最大の広さだという。
右側の通路は、男性用コーナーに続いていく。

男性用の靴

見上げた高い天井は圧巻だ。

店内の内装の随所には、生野の職人たちの技が散りばめられていて、来る人を楽しませる。これは生まれ育った生野のまちのものづくりを盛り上げたいという高本さんの思いからだ。
2階にあった壁を一部取りはずすと、1階の店舗がよく見えた。自然と一体感が出たこの2階部分を、今後はワークショップやイベントなどに活用していきたいと、高本さんは目を輝かせる。

2階にある水場。
コンクリートブロックには区内企業「BIG ONES(ビッグワンズ)」さんの「水圧転写」の技術が施されている。
絵は全て高本社長が手掛けたもの。リゲッタが誕生するまでのストーリーや、未来の夢が描かれている。

2階から見渡せる店舗部分。

2階には、広いスペースがある。
何十人もの人が集まれるこの場所はイベントでの活用も可能だ。

1階奥には、靴が出来上がる過程で使用される機械が並ぶ。
「本社をそのまま持って行きたい」という社長の思いから、本社から運ばれてきたものだ。
一般の方も見学できるので、スタッフの方に声をかけてみてくださいね。




「ここのお店は70点の出来をめざした」と意外な言葉が。「面白いアイデアを形にしていける余地を残して、どんどん変化していくお店って、お客さんもスタッフも楽しいでしょ?」と、くったくのない笑顔を見せた。
若い社長率いるこの会社は、今や日本各地の他、アジアの国々やドバイなど海外にも販路を広げている。会社の進化とともに、この店舗の、今は新しい木材の色も、しっとりと黒光りする年月を経た梁の色と、いつしか馴染んでいくのだろう。
「楽しく歩く人をふやす」という会社の理念を、確かにこの場所で感じることができる。


高本社長は、東京の専門学校で靴の製作を学び、卒業後は神戸で修業を積んできた。
修業時代から今に至るまで、たくさんの挫折・失敗を経験してきたという。その苦しさと正面から向き合ったからこそ、その先にある喜びも知っている社長は、「社員の幸せは、社長が定義するものではない。」と言い切る。「挑戦してもせんくてもしんどいんやったら、挑戦しようや。いっぱい失敗していいから」と社員に呼びかける。

社員の可能性を本気で信じる高本社長と、自分自身と向き合う社員一人ひとりの思いが交差するこの会社は、「楽しく歩く人」のイメージを追いかけながら、誰も通ったことのない道を切り開き歩んでいく。


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