いくのdeリノベ6月号:長屋の進化形“NAGAYA”

長屋について…

 古くからある集合住宅のカタチ“長屋”。壁を共有して横につながる形態は、それぞれの住戸として独立していますが、隣人との生活空間が近いので、自然と人とのつながりが生まれる住環境です。
 かつて、大阪のまちのあちこちにあったという長屋は今減少傾向にありますが、生野区では今も多く見かけられ、懐かしい下町の空気が流れています。



今回のお住まいは・・・

 連載第2回目は、築60年以上の“長屋”をセルフリノベーションし、自宅兼オフィスとして暮らす小笠原さんのお住まい。自宅を全て“住み開き”として公開されています。また、「生野区空き家活用プロジェクト」への参加など、地域活動にもすすんで取り組まれています。


 地下鉄小路駅付近の住宅街にある小笠原さんのお住まい。インパクトのある外観は、民家の中でも一際目立ちます。3歳まで生野区で暮らし、ご祖父母様も生野区の長屋で呉服屋を営まれていたという小笠原さん。「生野は僕のルーツなんです」と教えてくれました。


 幼いころから「長屋」と縁が深く、長屋ならではの人との距離の近さが好きだとのこと。また、ものづくりが盛んな生野区で、ご祖父母様を通じて昔から定着していた“自宅で働く”長屋暮らしにも、たくさん触れていたそう。


お住まいとの出会い・・・

現在のお住まいは、「長屋に住む!」と心に決め、探し求めて出会った物件。
「長屋に住むと決めたのは、現代においても合理的な“職住一体”のライフスタイルを新しい形で提案したかったから。自分で商売を始めようと思えば、テナントと住居をそれぞれ用意する必要がある。その分費用もかさむ。全てが当てはまる訳ではないが、長屋なら“職住一体”が可能だと思った。初期費用を抑えたスタートアップしやすい環境。昔は当たり前だったスタイルだが、今はあまり聞かない。これから“店を持ちたい”“事業を始めたい”そう思っている現代の人に取り入れやすい、そして取り入れたいと思ってもらえるようなライフスタイルを示したかった。」
馴染みが深い環境だからこそ気づけた“長屋”の良さ。生野区に絞り込んだ訳ではなかったそうですが、辿り着いたのがご自身のルーツである生野区だったという話に運命を感じました。


住んでみて・・・

「幼い頃に感じた“人のつながり”が今もたくさんある。移り住んだ当初は“何屋さん?”と聞かれることが多くて…表に貼り紙をしたり掲示板を出したり、何をしている場所かを知ってもらいたくて、『いつでも入ってきてください』と伝えたら、入ってきてくれ、自分の説明を聞いて分かろうとしてくれた。徐々に地域の方がこの場所を分かってきてくれている。今はお子さんも気軽に入ってきてくれて、ニックネームの“船長”と呼んでくれます。」
 自分の場所を伝えようとした小笠原さんと、理解しようと向き合った地域の方々。お互いが相手と関わりたいと思う気持ちが、人とのつながりを深め合っていくのだと、お話から改めて学びました。



住まいに込める思い・・・

 室内は、部屋を仕切る壁を取り払い、一続きの空間は解放感たっぷり。1階をオフィスとして、2階を住居として使用されています。

1階オフィススペース















2階にあるキッチン

 “ものづくり”に関わるお仕事をされている小笠原さん。お住まいもご自身で手掛けられたとのこと!
 全てセルフリノベーションだというお住まいは、休日を利用して2年かけて作られました。端材を活用することで費用を抑えつつ、デザインも素敵で素直に憧れます。
水道の蛇口をドアノブに活用するなど遊び心も見られ、見ていて楽しくなる空間です。


「DIYというと準備や作業に手間や時間がかかると思われがちで、始めるまでのハードルが高くなってしまう。でも、作る工程を工夫したり、便利なアイテムを活用したりすることで、意外に手軽に始められる。それを体感できる場所を作るために、全て自分でリノベーションすることにした。
 出来上がったものを訪れた人に見てもらうことで、一人でも多くの人が“ものづくり”に興味を持ってもらえればと思っている。
 新しいライフスタイルを提案するにあたって、自分で掲げているコンセプトがある。家もそのコンセプトに則って作った。また、この空間を見て共感してくれた方が、気軽に始められるもの、始めたいと思えるものであることも大切にしている。必要な工程を極限までシンプルにしたり、それでいて憧れを持ってもらえるようなデザイン性に配慮したり。」と住まいづくりのこだわりを教えてくれました。



 お住まい全体に“ものづくり”の楽しそうな雰囲気が溢れていて、訪れるだけで自然と“ものづくり”を始めたくなる。そう思わせる様々な工夫も、玄関に掲げたコンセプト通りに小笠原さんが仕掛けているもの。




 「昔から使われている良いものと現代の利便性の高いものを掛け合わせる、屋外に使う素材をインテリアに取り入れるといった、異なる要素の融合が新しい形を見せてくれる。いろいろなものや出会いを掛け合わせ、“新しいモノ”や“おもしろいコト”を提案していきたい。」と話す小笠原さん。
 思いがぎっしり詰まった自宅は、今までにない進化した長屋“NAGAYA”でした。


“ものづくり”のまちについてもっと知りたい方はこちら   
●「ものづくりの歴史」
http://www.city.osaka.lg.jp/ikuno/page/0000160822.html(区ホームページ)
●「ものづくり百景」区内の製造業で働く人や技術の魅力をイラストで紹介!
http://www.city.osaka.lg.jp/ikuno/page/0000347741.html(区ホームページ)

●生野区空家活用プロジェクト
https://www.facebook.com/ikunoakiyaPJ/

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