いくのdeリノベ5月号 素材とおいしさにこだわって30年。ぱん食店 こさり

代表の今井さん(左)と販売担当のスタッフ
北巽駅から東へ徒歩5分、勝山通沿いにある「こさり」は、天然酵母や国産小麦を使用するなど、素材にこだわったパン屋さん。大きな窓のある明るい店内。できたてのパンや焼き菓子などが並び、カフェスペースではゆっくりとした時間を過ごすことができる。


お店の外観。
南向きで日当たりがいい。

黒板調の壁には、大地の恵みを受けてパンができあがるまでのストーリーが描かれている。
素材にこだわる「こさり」のイメージとピッタリだ。

 ここでは、働くスタッフの半数が障がいをもっている。代表の今井満彦(いまいみつひこ)さんが障がい者の就労継続支援事業所(当時は福祉作業所)として「こさり」を立ち上げたのは、30代半ばの時だった。当時、一般企業で働いていた今井さん。娘さんが通う学童で出会った重度の障がいを持つ青年が、それまで福祉と関わりのなかった今井さんの人生を大きく変えた。身寄りがなく、地域のボランティアの人たちによって育てられていたその青年に、強く惹きつけられるものを感じ、彼を支える活動に自然と加わったという。
 今井さんと同じように仕事を辞め、障がい者とともに働いていくことを決めた仲間たちや、その青年を支えてきた地域の人たちとともに、資金を集め路地裏の一軒家を買った。2階を彼の住居にし、1階はパン屋に。障がいがある人もない人も対等に働けて、外向きの明るい仕事がしたかったと話す今井さん。しかし、みんなパン作りは初めてのことだらけで、試行錯誤のスタートだったという。
 徐々に固定客も増え、みんなに芽生えてきたパン作りへの自信は、「いつか日当たりの良い大通りにお店を出したい」という夢となり、2000年7月、現在の場所を思い切って購入することに。「こさり」が誕生して12年後のことだった。

クリームパン
ピザ

サンドイッチ
メロンパン

オレンジタルト。
冷蔵ケースには他にも、シフォンケーキやプリンも並ぶ。
食パン。クルミやレーズンが入ったものも。
ソーセージパン

店内の張り紙。
保育園に販売しているアトピー対応の卵や乳製品を使わないパンも好評。
みんなが同じ食事をとれるように、全てのこどもの給食に採用する保育園もあるそう。

 元は居酒屋として使われていた3階建ての建物を、1階は店舗、2階はパン工房、3階は事務所と休憩場所にリノベーション。店内は、車イスのお客さんも利用できる仕様だ。「体にやさしい素材」と「おいしさ」にこだわる当初からの理念は、30年経った今も変わらない。今日も「こさり」はたくさんのパンでお客さんを迎える。

車イスの方もパンが取りやすいように、低い位置にも棚が取り付けられている。
甘いパンから、おかずパンまで豊富な品揃え。
レジ横には、ラスク、ジャム、クッキーまでが並び、選ぶのが楽しい。

カフェスペースのテーブルにも気配り!
支柱が中央にあると車イスがぶつかってしまうので両端に脚があるテーブルを使っている。
有機栽培のコーヒーや紅茶とともに、ゆっくりと過ごすことができる。

1階のトイレ。ユニバーサルデザインで、車椅子の方も安心して利用できる。

2階、3階へ続く階段には、足が不自由なスタッフが昇り降りできるように昇降機のレールが取り付けられている。
絵本や木のおもちゃが用意されたキッズスペース。
 「こさり」とは、ハングルで“わらび”の意味。何度摘(つ)んでも生えてくる多年草の“わらび”にあやかり、根強く地域で生きていくという思いが込められているという。
蕨(わらび)

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