いくのdeリノベ3月号 心に描いてきたのは暮らしに溶け込むような名もなき場所

大塚典子さん

 疎開(そかい)道路から東へ入ってすぐ、東桃谷小学校グラウンドの向かいに、真新しい木の壁がひと際目立つ建物ができた。日当たりのよい南向きのガラス扉を開けると、大きなウォールナットのテーブルと、それを囲むように一つひとつ表情のちがう椅子が並び、奥にはキッチンが備えられている。無垢(むく)の木がふんだんに使われた静かで自然と落ち着く場所だ。

建物の外観。
車通りの少ない静かな通りに面している。

全面ガラスの扉から外を見ると、目の前に東桃谷小学校が見える。
休み時間には、グラウンドで遊ぶこどもたちの声がBGMのように心地良く聞こえてくる。
学校帰りの顔見知りの子どもたちが、中にいる大塚さんに手を振ってくれることも。

部屋の中央に置かれたウォールナットのテーブル。
IHコンロが埋め込まれているので、ここで料理をすることもできる。
知り合いの味噌づくりの名人による教室もひらいてみたいと話す大塚さん。

テーブルを囲む椅子は全て違っていておもしろい。

 「いたや木材有限会社」の倉庫兼加工場だったこの場所。使われないままに眠っていた木材は壁に張られ、当時の大工さんのメモ書きが残るコンクリートブロックの壁や、様々な樹種(じゅしゅ)の古材を使った天井は当時のまま残されている。

コンクリートブロックに残るメモ書き。
何かを数えた跡だろうか…

様々な樹種を使った天井。

 この場所では、学校帰りのこどもたちが宿題をしたり、買い物帰りのお年寄りが一休みしたり、近所の人がコーヒーを飲みながら読書したり・・・そんな空間をイメージしてリノベーションしたと話すのは、この会社の3代目で建築士の大塚典子(おおつかのりこ)さん。



 大塚さんが幼い頃、会社の事務所には、近所で商売をするおじさんたちが休憩がてらしゃべりに来たり、お茶しに寄ったり、そんな日常の風景があったという。
 そんな近所の人がふらっと立ち寄れる“暮らしの一部”に溶け込むような場所を自分も作りたいと思い続けてきた大塚さん。「これからまちの人と一緒に、どんな場所に育っていくのか、ドキドキするけどワクワクする」と笑顔で話してくれた。

建築の世界に入ったのも、デザインに興味があったのではなく、人の暮らしに興味があったのだという。
子育てを経験する中で、この場所への思いは強くなっていったと大塚さんは話してくれた。
笑顔がとても素敵♪

飾り棚の小物一つひとつに、古きよきものを大事にする大塚さんのこだわりが感じられる。



★勝山北3-2-22 06-6731-1269(いたや木材有限会社)

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