「里親(さとおや)」について、知ってください~「里親パネルディスカッション」より~
内容は、児童虐待の現状と里親が求められている状況についての「講演」と、里親関係者による「パネルディスカッション」です。
主催は、区役所、生野区子ども・子育てプラザ、児童養護施設田島童園の三者で、会場は区内唯一の児童養護施設である「田島童園」の今年できたばかりのホールをお借りしました。
当日は暑い中、60名を超える方々にご参加いただきました。このブログでは、パネルディスカッションでの発言を一部ご紹介させていただきます。
<里親パネルディスカッション参加者>
【コーディネーター】
生野区長 山口照美(以下、山口) |
【パネリスト】
認定NPO法人児童虐待防止協会 理事長 津崎哲郎氏(以下、津崎) |
社会福祉法人児童養護施設田島童園 施設長 下川隆士氏(以下、下川) |
生野区在住里親 海老子さん(以下、海老子) |
パネルディスカッションの様子 |
【テーマ】
今、なぜ里親なのか?
山口実際にお子さんを預かっている海老子さんに、一歩里親として踏み出したきっかけや、実際に里親をやってみて、感じていることをお話しいただけますでしょうか?
海老子
まず、里親になる前に、一時保護委託家庭(※)になりませんか、というプリントをいただきました。
自分の子どもたちに「やってみようかなと思う」と相談したら、「お父さんとお母さんがやりたいならやったらいいよ」と協力してくれました。
里親をするまでに6人を一時保護としてお預かりしました。養育里親の登録をしたきっかけは、一時保護対象の高校生の女の子の通学が、私の家からが一番都合がいいということで、その子の里親になってもらえませんか?と言われたからです。でも、その子は結局うちの家から出ていってしまって…。
「里親」になりたいという気持ちは大きくなっていったので、それなら小さいお子さんから始めようと思い、当時3歳だったお子さんをお預かりし、現在に至ります。
※一時保護委託
一時保護は、環境などの状況を把握し、養護を必要とする子ども等の最善の利益を守るために行われるもので、一時保護所を利用することを原則とするが、個別的な対応が十分でないことや、学校への通学ができないことが多いなどが学習権保障の観点からの問題などが指摘されている。
それまでの人間関係や生活環境などの連続性を保障するためや、一時保護所に定員を上回る児童が児童相談所の判断により、里親その他、適当な者に一時保護を委託することができる。現在は、以前から子どもとの関係性がある場合を除き、一時保護委託家庭は登録里親または里親として認定を受け登録予定の者に限定している。
山口
初めて「一時保護委託家庭をやりたい」と海老子さんがお子さんたちに相談したとき、お子さんは何歳ぐらいでしたか?
海老子
5~6年前ですので、成人している子、大学生の子、保育士になったばかりの子です。
山口
実は、この春に私も養育里親に登録しました。一時保護委託家庭の話があってから、そのまま里親になられるパターンもありますが、私は、養育里親を増やしたいと思っています。
地域でそのまま暮らせる子たちが、遠くに行ってしまうことは、子どもの成長にとってマイナスの面がすごく大きいと思うので、やっぱり、地域に里親さんが増えたらいいなと思います。
私の今のこの仕事の状況で、すべての子を預かれるわけではありません。でも、共働きや実子がいても、養育里親の登録というのはできるので、ぜひ多くの方にチャレンジして欲しいなと思っています。
一人でも二人でも、手をあげていただけると、子どもたちの生活が安定することにもなるので。
津崎先生も、里親経験がおありですが、いろいろな子どもたちを受け止める中で、環境など子どもたちに足りていないと思うことがあれば教えていただきたいと思います。
津崎
昔は、何か事情があれば、近所や親戚の人に預かってもらったという共同体の中でみんな生活していたように思います。
今、それに近いのが、徳之島とか種子島みたいですね。子どもの数が4~5人いても、地域レベルで助け合いをしているから、子どもがたくさんいてもしんどくないと言っていました。
内地の特に都市部に来ると、地域環境が壊れてしまって気軽に預けられる人がいないですから、ひとり養育するだけでもしんどいですね。そこでもう煮詰まってしまって、虐待とかにつながっていきます。都市型の新たな、気軽に預けたり、サポートしてもらえるような仕組みがあると、みんな子育てがしやすくなるのかなと思います。そういう環境がこれから必要なのかなと思います。
山口
確かに、今、近所の人が声をかけると、「声かけ事案」になって「安まちメール」の対象になってしまうような時代になっていて、そこでなかなか「助けて」が言えない、気軽に預けることが難しい時代になっていると思います。そこをつなぐ仕組みとして、ファミリーサポート制度というのがあります。これは「預かっていいよ」とか、「保育園の送り迎えを代わりにやってあげるわ」という人たちが研修を受けて「提供会員」になり、依頼する側の人とのマッチングのもと、いろいろ育児をサポートしてくれる制度です。
私も吹田市にいた時、下の子の送迎とかを近所の人がサポートしてくれて、すごくかわいがってくれていたので、近所にまるで実家ができたような思いがしました。
制度もありますが、まずはご近所のネットワークが大事です。日頃からちょっと声をかけていただいたら嬉しく思います。
下川施設長さんにおうかがいしたいのですが、施設で子どもたちを預かって、施設の中でもたくましく成長もしていると思うのですが、施設側から見た、里親であるとか、家庭的なものの必要性とか、こうあって欲しいという思いとかありますでしょうか。
下川
田島童園で生活する子どもの6割は乳児院で生活していました。たとえば親が養育の意思がない、または養育困難であることなどにより乳児院に預けられます。その後、年齢の関係で、児童養護施設の田島童園に措置変更となって入所してきます。
入ってくる前に何度か「慣らし保育」をしますが、強い不安や恐怖を抱えて入所してくることが伺えます。預けられ体験を重ねることになりますよね。また、可愛がってくれていた職員が結婚などで退職したりしますし、施設にいると、思春期の前期頃には「私は親に捨てられたからここにいるの?」との思いになっていく子も多いのが実際です。こういう思いや体験を何度も味わうことは良くない。そういうことからも、里親さんの方がよいのではないかと思うことがよくあります。
子どもたちは、小学の3~4年ぐらいから自分が施設にいることを意識し始めます。施設の子どもたちにとって学校は実にしんどい所なんです。家族の話になるとトラウマに触れてしまう。例えば、クラスの友達が休み時間に「昨日、新しくできた焼肉屋に家族で行ったけど、おいしかったで」という話をしたとします。しかし、施設の多くの子どもたちは家族との楽しいような話には入っていけない。クラスの友達と距離を置くことで自分を守っていき、自分と同じような環境の中で育った子どもとしか遊べなくなっていく。
里親さんに預かっていただけると、このような問題の多くは解消されていくと思っています。
山口
今の話を聞いて、自分の子ども時代も、こんな感じだったなと思いました。
友達との会話の中で、自分を守ろうとする気持ちが生まれてくる。とても辛いものを子どもたちは抱えているんです。施設でもさまざま工夫はしていただいていますが、生まれた時からほとんど施設しか知らない、「捨てられ体験」というところが大きくなって、なかなか人間関係を結ぶのが難しいという話は、私は当事者でもあるので、実感を持って聞いていました。
私は自分を産んだ母に会ったことがありません。私が10ヶ月ぐらいの時に3つ上の姉を連れて出ていったとしか聞いていません。今、46歳になりますが、一度も会いに来てもくれてないし、たぶん探そうともしていないだろうなと思います。父は割と早くに再婚して、父親と継母との生活になり、3年後に妹が生まれました。妹は実の子ですので、やっぱり差をずっとつけられながら育ってきました。
まだその継母とうまくいっていたらよかったのですが、小学校3年生ぐらいの時に一家で夜逃げをして、生活困窮に陥りました。
継母は、明るく、美しく、優しく、才能もある人でしたが、24歳でいきなり私を預かり、自分の子どももでき、経済的に安定し幸せだった時期はよかったのだと思うのですが、生活が困窮して引っ越すと変わりました。地域につながりもない、そうなってしまった自分が恥ずかしい思いもあったのか、すごくストレスをためて虐待をはじめるようになりました。
当然、自分の子には手を出しません。私を殴る蹴る、そしてかなりひどいことを言われて私は育ってきたのだと思うのですが、でも外にはまったく見えないという環境の中で、あの時、私がずっと考えていたのは、施設でもいいからとにかく「私を誰か助けて」でした。
捨てられ体験と同時に、育った環境が不安定だと、人に助けてがうまく言えなかったり、人間関係を作るのが下手だったりします。「この人、そんな性格でなんで区長やれてんのやろ」と思われるかもしれませんが、すごい葛藤の中で今も生きている部分があります。
だから少しでも、里親が広まって、一人でもそういう思いをする子が少なくなったらいいなと思ってやっています。
私は「虐待は連鎖する」という言葉は呪いの言葉だと思っています。自分がそうしてしまわないようにどうやったら断ち切れるかというのを考える時に、救ってくれたのが、継母の父でした。とってもいい人で、私のことを全力で愛してくれました。年に数回しか会えませんでしたが、その人がいたから死ななかった。
偏差値の低い高校に行っていましたが、いろいろと先生たちが、ほめてのばしてくれたりとか、少しずつのつながりの中でなんとか生きてきました。
私は、親とちゃんと手つないだ記憶もありません。だから、うちの子どもたちが、私が怒っても平気で言い返してきたり、次の瞬間には、何もなかったようにゲラゲラとテレビを観て笑っていたりする姿を見ると、腹も立つけれど、すごく安心するんです。この子たちは自信があるんだなって。
「私には絶対捨てられへん」「お母ちゃん、あんな怒っても、うちら絶対愛されている」っていう自信。それをすべての子どもたちに与えてあげたいんです。
海老子さんも里親をされていると、いろんなコミュニケーションの中で、何か気づいたことがあると思います。何か印象的なもの、あまり個人的なこととかはお話できないお立場ですけれども、自分が逆に気づかされたとか、実子の方の関わりで何か気づいたこととかぜひ教えてください。
海老子
ご質問の答えになるかどうかわからないですが、やっぱり初めに来た時、子どもにいろいろしてあげなくてはと思って、手を出してしまいます。
リュックがちょっと曲がっていたから正すと、「さわらないで!」と怒って、カバンを投げるんです。投げて持ってきてあげてもまた投げる。こちらの何か守ってあげたいとか、してあげたいとか、そういうことを始めは受け入れられないのかなというような状態でした。
子どもの立場になったら、知らないところに連れて来られて、今日からお父さん、お母さんですよって言われても、拒否反応を示してしまうということが、印象に残っています。
山口
拒否反応ということで、下川施設長の話にも通じると思うのですが、うまく人間関係が結べない、それがうまく解消できないと大人になって社会から孤立してしまうというところが、きっとあると思います。
そういった子どもたちとか、若者とか、時には親になっている人に、私たちが何かの機会で出会った時、どのような言葉かけがいいとか、どういった視点で見てあげて欲しいということがあればぜひ教えてください。
津崎
区長さんから自らの体験の話がありましたが、区長さんの場合は継母の父が自分をしっかり受け止めてくれた、あるいは、学校の先生がほめて育ててくれた、と言われていましたが、何かやっぱりよりどころがいると思います。
よりどころなしに生きるということは、基本的にはできません。よりどころが1つでもあると、施設から社会に巣立っても、うまくやれているという人の話はいくつも聞いています。
その人たちに共通しているのは、施設のあの先生が自分のよりどころやったとか、中には調理のおばちゃんがよりどころやったとか、そういうのを必ず持っています。逆に言うと、社会でうまくいっていない子は、よりどころとなる人がいなく、なかなかうまく振る舞うことができないみたいです。
先ほど虐待の連鎖と言われましたけれども、叩かれ、放り出されて、捨てられて育つと、一般論としては、同じように叩いて育てる、放り出して育てる、という風になりがちなのですが、それを防止するのが、「よりどころ」で、それがあると、その連鎖を生じさせないという報告がされています。
これは隣のおばちゃんでもいいし、学校の先生でもいいし、親族でもいい。
そういう人が一人いるかいないかで、その子の人生にとって、ものすごく大きいみたいです。
そういう意味で、よく悪いことをしたら叱ってあげなさいという言い方がありますよね。土台がしっかりしている子は叱ってあげてもいいんです。ただ、虐待されている子を叱ると、親と同じことをまた、まわりの人がするということになって、二次的虐待ということになる。
同じことでもプラスに働く場合と、マイナスに働く場合があるので、環境背景をよく知って欲しい。
こういう話をしていたら、ある学校の校長先生さんに「今までの対応間違っていました」と言われました。学校で何人か気になる子に、今までは教育的指導で怒っていましたが、それは間違いでしたと。それからは、あたたかい言葉をかけるようにしたら、その子が慕ってくれて、「校長先生ありがとう」って言って似顔絵みたいなのをプレゼントしてくれたそうです。
だから、そういうあたたかく支えてくれる人が一人いる子といない子では、その子の一生にとって非常に大きな差になって出てくると思います。
里親さんというのがそういう存在で、一番身近でなりやすいと思います。ただ、必ずしも里親でなくてもいいんです。
気になる子がいれば、あたたかい言葉で、気にかけていただくだけで子どもは助かると思います。
山口
一人でも、この人は自分を否定しないなと、安心していれる人に出会えるということは大事なことだなと、自分自身でも振り返って思います。
この間、性教育の指導のセミナーを受けまして、その時に性被害に遭った人たちのかけこみ寺的な病院の加藤先生という方が、こんな話をしていました。いろいろな子が相談に来るけど、まず「よく来たね」と声をかける。それから話を聞いて、「そうなんや」ととにかく話を聞く。否定したり、指導したり、自分の思う方に持って行こうとしない。「よく来たね」「そうなんや」「またおいで」、この3つしか言ったことがない、と言っていました。
この3つを言って、その子なりに受け入れられたと思ったら、また困った時にその人にアクセスしてくる。
一回でも否定されたり、嫌な思いをしたら、もうその後はなかなかつながってこない。子どもには、いろいろな糸が出ていると思うのですが、人間関係の中で「この人は無理」だと切れていくと、孤立してしまうのではないかと思うので、ぜひ、その糸が切れないようにつないで欲しい。
それには、たぶん少しそのコツがいると思うのですが、その辺りは、下川施設長がいろんな立場で経験もされていると思います。子どもたちにかける声のかけ方とか、コツとか、こんな経験ありますというのがあれば、教えていただければと思います。
下川
実は私は、児童自立支援施設で、非行を行って来た子をよく叱った部類の人間ですが・・。子どもたちは実によく大人を見ています。そして、この人は自分のことを真剣に思ってくれているのか、上から目線でないのかなど瞬時に見分けます。
しかし、裏切られ続けて来た体験をもっている子どもが、心から大人を信頼できるようになるには時間がかかります。
一事例ですが、施設に来てからずっと、夜の1時になっても2時になっても目を開いて寝ていない子がいました。「早く寝るんやで!」と言いたくなるのですが、そこは、「何か心配ごとでもあるの」と毎日声掛けを繰り返します。
容易に人を信頼できないから、寝れないほど心配していることがあっても打ち明けてこない。毎日書く日記にも、「今日は学校に行って〇〇の勉強して、昼からはこんなことしました」という記述が二ヶ月ほど続きました。
毎晩遅くまで寮母が足を揉んでやって寝やすくしたり、おにぎりを作って一緒に夜中に食べるなどをする中で、やっと本心を吐露するようになってきたんですね。その子は、自分が施設に入っている間に、母親が、付き合っている男といなくなってしまうのではないかと心配して寝れなかったのですね。
つながってくると、子どもは実によく喋るようになります。話を聞いてもらってきていない子どもたちなんだということがよく分かります。「うんうん」と聞いてやることで満足するのですが、子どもも話すことでひっかかっていたことなども整理していっていることがよく分かります。
実際には、言葉以外にも実に多くの発信をしてきます。それを受け止め、それに合った言葉を返していくことで、「この人は分かってくれる」とか「自分のことを受け入れてくれている」といった信頼みたいなものがつくられていくように思います。
山口
子どもへの声かけとかって、最初からスキルがあるわけではないと思います。だから、これからやろうという人たちは、けっこう不安な気持ちもあると思います。里親さんになったあとの横のつながりということで、里親会というのがあります。会長さんが来られていますので、ちょっと経験とか里親会でこんな話していますよという話があれば、ぜひお願いします。
里親会 会長 梅原さん
養育を初めてした方々は不安でいっぱいだと思いますので、里親サロンを月1回開いています。そのサロンに来ていただくと、先輩里親さんから実体験などをお話ししながら良きアドバイスをしてもらえます。ですので、安心して里親さんになっていただけたらと思います。
大阪市里親会は、大阪市の委託事業で、研修をしています。そこに、日常の子どもたちとのコミュニケーションの取り方といったテーマを入れており、いろいろな場面でスムーズに対応できるようにしています。
そのひとつに、特に心がけてやっていることは、日常をほめることです。特別なことをほめるのじゃなくて、朝起きてきたことをほめる、顔を洗ったことをほめる、学校へ行く用意ができていることをほめるというあたりまえのことをほめることを増やしていくと、子どもたちにとっては、ほめられ体験が増えるわけですから、信頼関係が早く築けるということになります。ぜひやってみてください。
山口
確かに日常をほめるというのは、効果があると思います。私が、さっき、継母の父親に救われたという話をしましたが、継母によく怒られて、叩かれたりして、部屋でこっそり泣いていました。
そうすると祖父(継母の父)が必ずやってきて、いつも「お前がかわいい、初孫やから一番かわいい」って、繰り返し繰り返し言ってくれて。
「生まれてきてくれてありがとう」「俺の初孫でいてくれてありがとう」「生きてるだけでマルやで」って、言ってくれたことは本当に救いでした。
坂の上に実家があるのですが、祖父は、坂から下りた橋のふもとで、いつも私たちが来るのを待ってくれていました。
もう亡くなって長いのですが、実家に帰ると、今もそこに立ってるような気がするぐらい、私にとっての支えです。
たぶん高校でいい先生に出会うまでは、生きる唯一の支えだったと言っても過言ではないです。祖父は何も意識せずに私に声かけていたと思うのですけど、たいしたことでなくても、人の人生変える力があったり、人が幸せに生きる、何かこう栄養になったりしてるんやなあと自分の体験でも思うので、今の話の中で、本当に日常ほめてもらえるとか、そこにおるだけで、起きてきただけで、ほめてもらえるってすごい素敵なことだなって思います。
最後に一言ずつ感想と、子どもたちに関わっていく仕事をずっとしてきている中で、やっぱり子どもって可能性あるよ、変わるよ、すごいこれって大きいことやと、やる気につながるような一言をいただけたらと思います。
津崎
専門知識持って、どうこうというものはあまり考えなくても、普通の親子関係でいいんです。子どもと一緒にいることを楽しむと、子どもも楽しんでいますから。そういう時間を多く持つということがポイントとなると思います。
海老子
普通に育てたらいいっておっしゃっていただいて、本当にそうだと思っています。こども相談センターさんの方から、海老子流の育て方でいいって言っていただきましたので、我が家の普通のやり方でさせていただいています。ご近所のお子さんともすごく仲がいいですし、学校の子どもさんとも仲良くやっていっているようで、泣いたり笑ったり、日々いろいろな刺激の中で育っています。
下川
私の最初の発言で、里親のもとでの養育の優れた点を述べましたが、施設での養育を否定しているわけでもありません。施設で育つにしても、里親さんの元で育つにしても、最も大切なことは、子どもへの「思い」だと思います。
出会う子どもたちは、大人を信頼してこなかったので色々と試してきますが、その試しに動じないでいると安心感を持ちます。そうすると、それまで満たされてこなかった心理的な欲求を一気に出してきます。赤ちゃん返りや独占行為によって「育ち直し」がされていきます。
満たしてくれる人が愛着の対象となり、心の拠りどころができることになります。同時に、褒められたい認められたいという承認の欲求が強くなってきて、どんどん頑張りだします。この成長の過程は里親さんのところでも、施設でも同じだと思っています。
山口
日常の私たちができそうなこと、たぶん、みなさんそれぞれに見えたと思います。
みなさんの近所の子どもであったりとか、ちょっとつながってる子どもの糸がたぶん出てると思います。そのつながっている先、ぜひ、声をかけていただいて、そしてさらに一歩踏み出そうという方には、ファミリーサポートであったり、子育てサロンのボランティアだったりにチャレンジしてください。
そしてぜひ、里親をたくさん増やしたいと思っています。理想は「一小学校区一里親」と言いたいところなんですが、まだそこまで全然行っていないので、「一中学校区一里親」ぐらいの数をめざしながら、多くの方に制度を知っていただいて、そして支える仕組みがあるということを知っていただきたい。ぜひ、一歩踏み出していただけたらと思います。